健康食品と特許

発明のとらえ方

 私の事務所には、新製品を開発したが、他社の製品と差別化し、他社に真似されないように特許出願をしたいというご依頼がよくあります。そのようなご依頼を受けたとき、私はその新製品に関して、次のような手順で質問をします。

 すなわち、①使用する原料は新しいもの(これまでに使用されていないもの)ですか、②原料を処理する方法は新しいですか、③その処理方法によって得られた物は新しいですか、④その製品の用途は新しいですか、⑤その製品によって、従来の同種の製品と比べて、どのようなメリットが得られましたか、というような手順です。

 これは、従来の製品と比べて、その新製品の新しい点はどこか、それによって顕著な効果が得られるのか、ということを聞き出して、特許性があるかないかを検討するためです。

 ①には、いろいろなケースがあり、例えば、これまでに知られていない新規物質(例えば新規な酵素で生産された新規なオリゴ糖など)、公知のものではあるが食品としては利用されていなかったもの、公知の食品原料であるがその組合せが新しいもの、などがあります。

 そして、①に該当する場合、新規物質であれば、その物質の産業上の利用可能性が認められることを条件にして、物質特許として特許を取得できる可能性があります。また、公知の物質であっても食品原料として新しい場合、例えば食品として利用されていなかった植物を原料とする場合などには、それを食品原料として利用することにより何らかの優れた効果がもたらされるのであれば、特許性が認められる可能性があります。更に、公知の食品原料であるが、その組合せが新しい場合であって、それによって、例えば食感、風味等の改善とか、相乗的な生理活性効果とかがもたらされるのであれば、特許性が認められる可能性があります。ただし、単に組合せが新しいということだけで、その効果も当業者が予測できる程度のものである場合は、進歩性を認めてもらえない可能性があります。

 ②は、公知の食品原料から得られたものであっても、その食品原料の処理方法、例えば有効成分の抽出方法、酵素処理方法、処理工程の手順などが新しい場合を想定しています。

 そして、②に該当する場合、例えば有効成分の抽出方法を変えることによって有効成分をより多く抽出することが可能となったとか、酵素処理によって食感、風味が改善されたとか、生理活性効果がより向上したとかの効果がもたらされるのであれば、特許性が認められる可能性があります。

 ③は、公知の食品原料から得られたものであっても、その処理方法に新しさがある場合に、結果として製造される物自体にも、物理的、化学的に従来品と区別できる点があるかないかを想定しています。

 そして、③に該当する場合、上記処理方法としての発明だけでなく、結果的に得られる製品自体の発明も特許を取得できる可能性があります。一般に処理方法などの発明は、侵害の立証が困難である場合もありますが、それによって得られる製品自体の発明も併せて特許化できれば、より強力な保護が得られます。

 ④における製品の用途というのは、例えば公知の素材であっても、これまで使われていなかった用途に使用したところ、予想外の効果が見つかったというケースを想定しています。例えば、パン類にしか使用されていなかったある素材を、麺類に添加したら麺類のこしを増強するという、これまで知られていなかった効果が見出された場合とか、食品素材としては公知であったが、その素材がこれまでに知られていなかった新しい生理活性を有することが発見され、そのような用途の医薬品として利用できる可能性を見出した場合などが挙げられます。

 上記④に該当する場合には、それぞれの用途を特定した発明として特許性が認められる可能性があります。例えば医薬用途の発明の場合には「…を有効成分として含有することを特徴とする~剤、~組成物」というような請求の範囲で記載されます。上記~の部分には、医薬用途を特定する言葉、例えば免疫増強、抗癌、抗ウイルス、肝機能増強などの言葉が入ります。ただし、「…を有効成分として含有することを特徴とする医薬品」とか、「…を有効成分として含有することを特徴とする~機能を有する飲食品」というような表現では、医薬用途を限定したことにならないので、有効成分となる物質自体に新規性がないと特許性が認められないと考えられます。

 このように、発明のとらえ方は多様であり、より有効な権利を得るためには、特許出願の仕方について十分に検討する必要があります。

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