健康食品と特許

他人の特許を潰すには

 自社製品が他人の特許を侵害する可能性がある場合、その対策の一つとしてその特許を潰すことができるかについて検討しなければなりません。このような手段として、その他人の特許が出願中でまだ権利化されていない場合には、情報提供(特許法施行規則第十三条の二)を行うことができ、既に権利化されている場合には、特許異議申立(特許法第百十三条)、特許無効審判(特許法第百二十三条)を行うことができます。ただし、異議申立は、特許公報が発行されてから六ヶ月以内に限られます。

 このような手続には、当然のことながら特許性を否定するための証拠を提出する必要があります。証拠としては、例えば特許文献、書籍、雑誌、新聞などの刊行物、実験報告書、製品のサンプル、ビデオテープなどが挙げられます。特許の新規性、進歩性を否定する証拠として提出する場合、その発行日、発表日、販売日等がその特許出願日前であることを確認できるものでなければなりません。また、情報提供において提出できるものは、刊行物、実験報告書等の書類でなければならず、ビデオテープなどの「書類」に該当しないものは提出できません。

情報提供と、異議申立は、利害関係人に限定されず、何人も行うことができ、情報提供においては、提出者の住所や名前を省略することもできます。このことは、事件に対して関係のない第三者の名前(ダミーと呼ばれる)を使ったり、提出者の住所や名前を省略することにより、本来の情報提供者や異議申立人を隠して行うことができることを意味します。しかし、無効審判は、利害関係人に限られるので、その特許に対して何らかの利害関係がある者、例えば同業者、警告された者、訴えを提起された者等でなければなりません。

情報提供がなされると、審査官は、提出された書類を審査の参考にし、それによって拒絶理由があると判断した場合には、拒絶理由通知を出してくれます。しかし、情報提供者には、フィードバックを希望する旨の記載がある場合に限り、拒絶理由に採用したかどうかが連絡されるだけであり、審査の結果などの連絡はされません。したがって、情報提供者自身が審査経過等を定期的に調べて、その結果を調査し、特許化されてしまった場合には、機会を逃すことなく、異議申立、無効審判等の次の手段を検討しなければなりません。

異議申立がなされると、特許庁の審判官の合議体(通常三名)によって審理がなされ、異議申立の理由があると判断される場合には、審判長から取消理由通知書が特許権者に発せられます。これに対して、特許権者には、意見書を提出する機会、及び特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正請求を行う機会が与えられます。

同様に、特許無効審判が請求されると、特許権者にはその副本が送達され、答弁書を提出する機会、及び上記と同様な目的で訂正請求を行う機会が与えられます。審判官は、こうして提出された両者の意見を検討し、特許を無効とするか否かの審決を出します。

異議申立がなされた後は、基本的には、審判官と特許権者との間で審理が進行しますが、特許権者から訂正請求が出された場合には、異議申立人に再度意見を述べる機会が与えられます。また、特許無効審判においても、特許権者から訂正請求書が出された場合には、無効審判請求人に再度反論の機会を与えられます。しかしながら、訂正請求書が出されなかった場合に、再度反論の機会が与えられるかどうかは審判官の裁量にまかされています。

したがって、異議申立及び無効審判請求をした後は、定期的に包袋閲覧請求をして、特許権者から提出される意見書、訂正請求書等の内容を逐次チェックし、必要があれば、審判官に再度意見を述べる機会を与えてもらえるよう交渉する方がよいと思われます。

なお、特許異議申立がなされた事件のうち、異議申立の理由が認められて取消された割合は、一九九八年が二十%、一九九九年が三十三%、二〇〇〇年が二十八%となっています。また、特許無効審判において、請求が認められて特許が無効とされた割合は、一九九五年が五十二%、一九九六年が三十五%、一九九七年が二十二%となっています。

このように、特許異議申立や無効審判によって特許権を取消又は無効にできる可能性はかなり少なく、一旦権利化されてしまうと、容易には潰せないことがわかります。このことから、特許出願中の段階から、情報提供等の手段を講じて権利化を阻止することが重要であると思われます。

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