健康食品と特許

特許対策はなぜ必要か

 食品業界というのは、例えば使用する原料や、配合や、調理方法などにおける秘伝のノウハウがあって、そのような技術は特許出願をしてもなかなか権利になりにくいだろうし、ノウハウが開示されてしまうデメリットの方が大きいと考えられ、特許出願に消極的な傾向がありました。このため、今から20年以上も前は、食品分野の特許出願件数は、電気や機械分野の特許出願件数に比べると桁違いに少ないという状況でした。

 この傾向は、今でも基本的には変わっておりませんが、近年では、食品業界においても特許の重要性が認識されつつあり、食品分野の特許出願件数は確実に増えております。例えば健康食品の多くのものが入る特許国際分類A23Lの特許出願件数は、平成5年が2120件、平成8年が2363件、平成11年が2548件、平成14年が3164件となっています。

 また、JAS法による食品表示の対象が、これまで64品目であったものから、法改正によりすべての飲食料品に拡大されたことにより、これまでノウハウとされてきた配合等も開示せざるを得ない状況にあります。この表示義務は、積極的に特許出願をしている企業にとっては、侵害品の発見や立証がしやすくなるというメリットがあります。

特許権というのは、特許出願された発明について、特許庁における審査を経て新規性、進歩性等の要件が認められて登録された場合に、年金を支払うことを条件にして、出願の日から最大20年間、その発明を独占的に実施できるという、国家によって認められた強大な権利です。特許権者には、侵害者に対して、差止請求権、損害賠償請求権、不当利益返還請求権などが認められます。

食品業界において、訴訟までなされるような特許紛争は、それほど多くあるわけではありません。しかし、訴訟にはならなくても、特許権の存在によって、企業活動上、様々な制限を現実に受けていることは事実です。例えば何億という売り上げを上げているような商品に対して、他社から特許権侵害のクレームがきたら穏やかではありません。その場合、その特許権を本当に侵害しているかどうか、無効理由がないかどうかなどを十分に検討し、相手方と話し合いをすることになりますが、話し合いがまとまらずに訴訟になってしまった場合には、企業イメージが低下する虞れがあり、訴訟に負けたら多大な損害賠償をしなければならなくなる可能性もあり、無効理由を請求してもその結果がでるのには2~3年かかるケースが多いことを覚悟しなければなりません。

このため、特に大企業においては、原料メーカー等から商品を購入する際に、特許権侵害の可能性がないかどうかを確認することが多くなっています。特許権侵害の可能性がある場合には、魅力のある商品であっても、購入を見送られてしまうことになります。なぜなら、そのような商品を購入することにより、特許権侵害として訴えられた場合には、上記のような理由から全社的な問題となってしまうので、担当者としても慎重にならざるを得ないからです。

また、新商品を企画して長い年月をかけて研究開発し、ようやく上市にこぎつけたところ、自社又は取引先の特許調査によって侵害の可能性のある他社特許が発見された場合には、商品の構成を変えるために上市を遅延させたり、あるいは上市をあきらめたりしなければならないこともあります。それによって、技術者の苦労や、多大な研究費が無駄になってしまうこともあります。

一方、同じような商品であっても、特許を取得している商品というのは、原料や製法等のどこかに独自性があると判断されることが多く、特許公報にはその優れた点が具体的に記載されているため、商品をアッピールしようとする際の説得力が増し、他社商品と競合したときに取引上有利になることが多いようです。

このように、食品業界において、訴訟まで提起されるような特許紛争は、それほど多くはないものの、特許の存在は、企業活動において様々な影響を及ぼしていることは事実です。したがって、食品業界において、特許など無縁だろうというような安易な考えでは、これからの企業競争において遅れを取る可能性があると思います。

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