健康食品と特許

特許出願の際の着眼点

 健康食品の特許といっても、どんなものが特許になるのかと素朴な疑問を持たれる方も多いと思います。そこで今回は、健康食品に関する特許の具体例を挙げて、特許をとるためにはどのような点に着眼したらよいかについてご説明したいと思います。

 製品開発に当たっては、何らかの新しい工夫を伴うことが通常です。開発者自身、どこに特許性があるのかよくわからない場合であっても、特許出願ができるかどうかの相談を受けて、その原材料、工程、製品の特徴、用途、従来品と比べたときの違いや利点などについて事細かに説明を聞いてみると、その中に特許として成立しそうな意外な事柄が発見される場合があります。

 このような特許性の判断に当たっては、まず、原材料として従来製品と違う部分があるかどうかを考えてみましょう。すなわち、健康食品素材として新しい原料なのか、公知の原料なのかという点を検討します。もしこれまでにない新しい原料を用いていて、それによって何らかの優れた効果、例えば生理活性効果などがもたらされるのであれば、その点で特許性を主張できる可能性があります。また、公知の原料であってもその組み合わせに新規性があり、それによって何らかの優れた効果、例えば顕著な生理活性効果等がもたらされる場合にも、同様に特許性を主張できる可能性があります。

 次に、その原材料から製品を得るための製造工程に何らかの特徴がないかを検討します。例えば有効成分の抽出工程、微生物を用いた発酵工程、酵素による分解工程、粉砕、加熱、乾燥などの処理工程などについて、従来製品と異なる部分がないか、それによって、例えば生理活性効果の向上とか、食感や風味の改善とか、消化吸収性の向上とかの効果が生じないかを検討します。

また、そのような製造工程によって得られる食品素材自体が新しいものでないかどうかを検討します。例えば公知の原料を使用した場合であっても、それを例えば酵素分解することによって、分解物としてこれまでに知られていない化合物や組成物ができ、それによって生理活性効果などの点で何らかの優れた効果がもたらされるのであれば、新規な物質又は組成物として特許を取得できる可能性があります。例えば酵素分解の程度によって生理活性効果が違う場合には、特定範囲の重合度や分子量などに限定することによって、新規性、進歩性が認められる可能性もあります。

更に、公知の健康食品素材であっても、これまでに知られていなかった新しい生理活性等を見出した場合には、新しい用途に向けた発明として特許を取得できる可能性があります。例えば制癌剤、抗ウイルス剤、免疫増強剤、腸内フローラ改善剤、便通改善剤、血圧上昇抑制剤、血中コレステロール上昇抑制剤、血糖値上昇抑制剤、脂質代謝改善剤、肝機能改善剤、脂肪肝抑制剤、糖尿病改善剤、美肌促進剤、育毛促進剤など、様々な生理活性効果に基づく医薬用途の発明が成立しています。

以上の説明では、例として生理活性効果ばかり挙げてしまいましたが、進歩性を認めてもらうのに役立つ効果は、生理活性効果に限られません。例えば、製品の風味、食感、消化吸収性の向上、製品としたときの保存性、安定性、品質の向上などの効果も、進歩性を認めてもらうのに十分な効果となることがあります。例えば、ある公知の健康食品素材を酵素分解することによって、飲料としたときの溶解性が向上して沈殿が抑制されたような場合も、進歩性が認められる可能性があります。

ところで、特許出願に当たっては、特許がとれるかどうかだけでなく、結果として、他社の追随を抑制するのに有効な権利が取得できるかどうかについても考慮する必要があります。そのような観点から言えば、健康食品素材となる物質又は組成物自体の発明として権利化するのが、権利範囲や、侵害立証の容易さなどの点で、一般的には最も効果的であると考えられます。

これに対して、製造方法や抽出方法などの発明は、権利範囲としては広くとれる可能性があるのですが、発明の内容によっては侵害の立証が困難な場合があります。また、医薬用途の発明は、例えば単なる食品として製造、販売されても、侵害であると主張できないという問題があります。ただし、私は、医薬品に限らず、健康食品であっても、そのような生理活性効果を宣伝して商品を販売するような場合には、医薬用途発明の侵害が成立するのではないかと考えています。

以上、思い当たるままにご説明いたしましたが、健康食品に関する特許出願の際に、多少なりともご参考になれば幸いです。

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