健康食品と特許

健康食品特許の類型

 健康食品に関する特許といっても、発明のとらえ方によっていろいろな態様があります。そもそも発明には、大きく分けると、物の発明と、方法の発明とがあり、方法の発明には、物を生産する方法の発明と、その他の方法の発明とがあります。物の発明は、その物を生産し、使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む)をする行為が侵害とされ、方法の発明は、その方法を使用する行為が侵害とされますが、物を生産する方法の発明は、その方法の使用だけでなく、その方法により生産した物を使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為も侵害とされます(特許法第2条第3項)。

 健康食品における物の発明の例を挙げると、例えば健康に対して何らかの優れた効能を有する新規な食品素材を発見した場合には、その食品素材自体の発明として特許を取得できる可能性があります。そのような特許は、その食品素材を生産したり、譲渡したりする行為だけでなく、その食品素材を飲食品の原料として用いることも侵害となります。

 また、食品素材自体は公知のものであっても、その食品素材が有するこれまでに知られていなかった新たな生理活性等を発見した場合には、そのような食品素材を有効成分とする~剤、~組成物(例えば抗癌剤、免疫賦活剤、腸内フローラ改善組成物など)というような医薬用途の発明として特許を取得できる可能性があります。ただし、そのような特許は、単にその食品素材を利用したからといって侵害になるわけでなく、その食品素材を上記のような医薬用途に向けた製品として利用したときに初めて侵害が成立します。ここで、医薬用途に向けた製品というのは、必ずしも薬事法で認可を受けた製品だけでなく、健康食品のようにそのような生理活性効果を消費者に期待させて販売される商品なども含まれるのではないかと私は考えております。

 更に、公知の食品素材のこれまでに知られていなかった組合せによって、既に知られていた生理活性効果が相乗的に向上するとか、風味、食感が良好になるとか、消化吸収性がよくなるとか、保存性が良好になるとかの新たな効果が見出されれば、それらの食品素材を組合せた組成物の発明として特許を取得できる可能性があります。

 一方、健康食品における方法の発明の例を挙げると、例えば、植物、動物、魚介類等から得られた各種の原料を微生物によって醗酵させることにより、生理活性物質を豊富に含む組成物を生産する方法とか、上記各種の原料に、特定の物理的処理、化学的処理、酵素的処理などを施すことによって、生理活性物質を豊富に含むエキスを抽出する方法とか、健康食品素材の食感、風味、消化吸収性などを改善するために、粉砕、磨砕、加熱などの物理的処理を施したり、酵素分解したりする方法とかが挙げられます。

 このように、発明は、その特徴とする部分に応じて、上述したような様々な態様で記載することができます。そして、発明をどのような態様で記載するか、特許的に言うと、どのような構成要件で記載するかは、特許の成立しやすさ、権利の範囲、侵害立証の容易さなどに影響を与えます。したがって、特許出願をする上で、発明をどのようにとらえるかが、その後の権利化や、権利行使に大きな影響を与えることになります。

 昔から、食品業界では、原料の配合、処理方法などがノウハウとなっているため、特許を出願することによってノウハウが開示されてしまい、逆に他社に真似されるきっかけを作ってしまうという考えが根強く、特許出願に対しては消極的である傾向がありました。しかしながら、近年では、そのようなデメリットよりも、特許を取得することによって、他社商品と差別化し、他社の追随を防ぐというメリットの方が強く認識されるようになり、各社とも積極的に特許出願をするようになってきています。

 したがって、新商品の開発に当っては、その商品にからむ技術に対して、特許的な見地から検討を加え、特許性や権利範囲などの点で有効な発明としてとらえることができれば、積極的に特許出願をすることを検討すべきだと思います。

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