健康食品と特許

他社の追随を阻止するには

 商品が売れるか売れないかに関しては、様々な要因があって、特許を取得した商品が、必ずしも売れるとは限りません。しかしながら、特許を取得した商品と、そうでない商品との相違は、第三者がそれを真似することができるか、できないかという点にあります。売れる商品ほど、他社が追随して同様な商品を出してくる可能性があります。そんなときに、何か知的財産権を取得しておけばよかったと思うことはないでしょうか。

 知的財産権としては、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などがあります。この中で、特許権、実用新案権は、発明、考案という技術的思想の創作を保護するものであり、意匠権は、物品のデザインを保護するものであり、商標権は、商品や役務に関して自他の識別のために付されるネーミングやマークを保護するものであり、著作権は文学、美術、音楽、コンピュータプログラムなどの著作物を保護するものです。このように知的財産権にはいろいろありますが、他社の追随を防ぐために最も効果的な権利を取得する必要があります。

 新素材を使った健康食品について、その素材名そのものを含む商標を取得したいという依頼がときどきあります。しかしながら、その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格などを普通に表示した商標は、自他商品識別力がないという理由(商標法第3条第1項第3号)で、通常は拒絶されてしまいます。また、その商標が単に原材料を表すものであることを審査官が知らずに登録し、仮に商標権を取得したとしても、そのような商標は、需要者に商品の内容を示すために本来誰でも自由に使えるようにしなければならないため、商標法第26条の規定により商標権の効力が及ばない商標と判断される可能性があります。

 商標権は、例えばブランドのように、その商品が需要者の好評を得て、需要者がその商品に付された名前やマークを見て商品を購入するようになった場合に、そのような名前やマークを第三者が勝手に使えないようにするという効果を発揮するものであり、原材料、製法などの商品の内容自体を保護するものではありません。

 したがって、健康食品の分野において、他社の追随を防ぐために最も効果的な権利は特許権だと思います。実用新案権も技術的思想の創作を保護する点では特許権と同じですが、物品の形状、構造又は組み合わせに関する考案に限られており、健康食品の場合に適用できるケースは少ないと思います。また、意匠権は、物品のデザインを変えれば侵害を回避できるため、健康食品の分野においては決定的な牽制力にはなりにくいと思います。

 ところで、特許を取得するためには、発明に新規性、進歩性がなくてはなりません。したがって、特許出願をするに当っては、その商品について特許性があるかないかを考えなければなりません。しかしながら、他社の追随を防ぐ企業戦略として特許を考えるならば、特許出願をするかしないかの判断は、単に特許性があるかないかということだけでなく、その商品の重要性という点も考慮すべきであると思います。

 すなわち、商品が売れるか売れないかは、特許性があるかないかということとは直接的な関係がなく、売れる可能性のある商品は、他社が追随してくる可能性もあるわけで、そのような商品については、特許性がなさそうに思えても、特許出願の可能性について検討すべきであると思います。

 特許性について微妙であるような特許出願であっても、その出願について拒絶査定等が確定するまでは、他社に対する1つの牽制力となることが期待できます。また、自社では特許性がないと思って出願をしなかったにも係らず、同様な発明について他社から出願されてしまった場合には、逆に自社商品について特許侵害の可能性が生じないかというような心配をしなければなりません。

 このように、他社の追随を防ぐための企業戦略上の手段として特許を考え、重要な商品については、特許性がなさそうに思われても、様々な観点から特許性を主張できないか検討してみることが必要だと思います。

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