改正法解説

特許・実用新案審査基準の改訂

特許・実用新案審査基準について以下の改訂がありました。
1. 「第II部第1章 産業上利用することができる発明」
2. 「第VII部第3章 医薬発明」
改訂審査基準は平成21年11月1日以降に審査される出願に適用されます。

(1)「第II部第1章 産業上利用することができる発明」の改訂によって、人体から各種の資料を収集する方法については、手術や治療の工程や、医療目的で人間の病状等を判断する工程を含まない限り、保護対象となることが明確になりました。そして、新たな事例も補充され、医療技術関連発明について保護対象となるか否かの判断が行い易くなりました。

特許庁によると改訂のポイントとして下記の点が挙げられています。
(1)第II部第1章「産業上利用することができる発明」について
(i)人体から各種の資料を収集する方法は、手術や治療の工程や、医療目的で人間の病状等を判断する工程を含まない限り、「人間を診断する方法」に該当しないこととしたこと。
(ii)組合せ物(物理手段と生化学手段との組合せ、生体由来材料と足場材料との組合せ、生体由来材料と薬剤との組合せ等)の事例を追加したこと。
(iii)細胞の分化誘導方法等が、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当しないことを明記し、関連技術の事例を追加したこと。
(iv)アシスト機器関連技術の事例を追加したこと。

上記各ポイントに対応する事例(人間を手術、治療又は診断する方法に該当しないもの)としては下記のものが挙げられています。なお、下記の記載では発明の概要が分かる程度に簡略化しています。正確には各事例の全部を参照してください。

(1)(i) 人体から各種の資料を収集する方法は、手術や治療の工程や、医療目的で人間の病状等を判断する工程を含まない限り、「人間を診断する方法」に該当しないこととしたこと。

4.2.3 データ収集に関するもの
事例19-1
「X線CT装置の各部を制御手段が制御して撮像する方法であって、X線発生手段を制御しを照射する工程と、X線検出手段を制御して人体を透過したX線を検出する工程と、検出され構成処理して画像データに変換し表示する工程とを備えたX線CT装置による撮像方法。」

事例20-1
「磁気共鳴撮像装置による磁気共鳴撮像方法において、撮影対象領域に対して、スライス方向の傾斜磁場を発生させながら90°パルスを照射し、所定量の位相エンコード方向の傾斜磁場を発生させ、スライス方向の傾斜磁場を発生させながら180°パルスを照射し、リードアウト方向の傾斜磁場を発生させながら当該領域から磁気共鳴信号を検出することにより実行されるパルスシーケンスを、位相エンコード方向の傾斜磁場の強度を低次から高次に順次変えながら繰り返し実行する、磁気共鳴撮像方法。」

事例21
「放射性薬剤を投与された被検体の心臓を心拍に同期させてSPECT撮影し、前記心臓を造影剤を用いずに心拍に同期させて超音波組織ドプラ撮影し、得られたSPECT画像と超音波組織ドプラ画像を、心拍の時相ごとに重畳する方法。」

(1)(ii) 組合せ物(物理手段と生化学手段との組合せ、生体由来材料と足場材料との組合せ、生体由来材料と薬剤との組合せ等)の事例を追加したこと。

4.2.2 治療に関するもの
事例13-2
「内部に抗癌剤が封入されたマイクロカプセルXであって、集束超音波により破壊されて内部の抗癌剤を放出するマイクロカプセルXと、腫瘍の位置を示す画像データを取得するための手段、画像データに基づいて集束超音波の焦点位置を腫瘍の位置に合わせる手段、及び、マイクロカプセルXに対して集束超音波を照射する手段を備えた装置からなる癌の治療システム。」

事例14-2
「生体親和性高分子材料Zで形成されたゲル中にA細胞が包埋されており、ヒトの関節内に移植されるように用いられることを特徴とする、生体親和性高分子材料Z及びA細胞からなる軟骨再生用移植材料。」

事例15-2
「A細胞と細胞成長因子Wとを有効成分として含有し、ヒトの心筋梗塞部位に投与されるように用いられることを特徴とする心筋梗塞治療用組成物。」

(1)(iii) 細胞の分化誘導方法等が、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当しないことを明記し、関連技術の事例を追加したこと。

4.2.4 人間から採取したものを処理する方法に関するもの
事例23-1 細胞を分化誘導する方法(人間を手術、治療又は診断する方法に該当しないもの)
「ヒト誘導多能性幹細胞を、無血清培地中、X細胞増殖因子存在下で培養することを特徴とする、ヒト誘導多能性幹細胞を神経幹細胞に分化誘導する方法。」

事例23-2 細胞を分離、純化する方法(人間を手術、治療又は診断する方法に該当しないもの)
「ヒト誘導多能性幹細胞から分化誘導された神経幹細胞を含む細胞集団から神経幹細胞を分離、純化する方法」に関する発明。

事例23-3 細胞の割合を分析する方法(人間を手術、治療又は診断する方法に該当しないもの)
「ヒト誘導多能性幹細胞から分化誘導され、分離、純化された神経幹細胞を含む細胞集団における、神経幹細胞の割合を分析する方法」に関する発明。

(1)(iv) アシスト機器関連技術の事例を追加したこと。

4.2.5 アシスト機器に関するもの
事例26-1 歩行状態の判定方法(人間を手術、治療又は診断する方法に該当しないもの)
「作業者の負担を軽減するために作業者の脚に装着するパワーアシスト機器を用いて、歩行状態を判定する方法」に関する発明。

事例26-2 パワーアシスト機器の制御方法(人間を手術、治療又は診断する方法に該当しないもの)
「作業者の負担を軽減するために作業者に装着するパワーアシスト機器の制御方法」に関する発明

事例26-3 パワーアシスト方法(人間を手術、治療又は診断する方法に該当しないもの)
「作業者の負担を軽減するために作業者に装着するパワーアシスト機器を用いて、作業者の動作をアシストするパワーアシスト方法」に関する発明

(2)「第VII部第3章「医薬発明」の改訂によって、特定の用法・用量で特定の疾病に適用するという医薬用途が公知の医薬と相違する場合には、当該技術的特徴を構成要件としてなる発明が保護対象となることが明確になりました。そして、新たな事例も補充され、医薬発明について保護対象となるか否かの判断が行い易くなりました。

特許庁によると改訂のポイントとして下記の点が挙げられています。
(2)第VII部第3章「医薬発明」について
(i)医薬発明において、特定の用法・用量で特定の疾病に適用するという医薬用途が公知の医薬と相違する場合には、新規性を認めることとしたこと。
(ii)細胞等の生体由来材料の用途に特徴のある発明の事例を追加したこと。
(iii)製造方法で特定された細胞の医薬用途に特徴のある発明の事例を追加したこと。

上記各ポイントに対応する事例(拒絶理由を有しない事例とされているもの)としては下記のものが挙げられています。なお、下記には発明の概要が分かる程度に簡略化します。正確には各事例の全部を参照してください。

(2)(i) 医薬発明において、特定の用法・用量で特定の疾病に適用するという医薬用途が公知の医薬と相違する場合には、新規性を認めることとしたこと。

3.2 特定の用法又は用量で特定の疾病に適用するという医薬用途に特徴を有する医薬
事例4 特定の用法又は用量で特定の疾病に適用することで顕著な効果が奏されるもの
「30~40μg/kg体重の化合物Aが、ヒトに対して3ヶ月あたり1回経口投与されるように用いられることを特徴とする、化合物Aを含有する喘息治療薬。」

事例5 特定の用法又は用量で特定の疾病に適用することで顕著な効果が奏されるもの
「1回あたり100~120μg/kg体重の化合物Aが、ヒトの脳内の特定部位Zに投与されるように用いられることを特徴とする、化合物Aを有効成分として含有する卵巣癌治療薬。」

(2)(ii) 細胞等の生体由来材料の用途に特徴のある発明の事例を追加したこと。

3.1特定の疾病への適用という医薬用途に特徴を有する医薬
事例2 細胞等の生体由来材料が公知であって、医薬用途が新規であるもの
「A細胞からなる細胞シートを含有する心筋梗塞治療用移植材料。」

(2)(iii) 製造方法で特定された細胞の医薬用途に特徴のある発明の事例を追加したこと。

3.1特定の疾病への適用という医薬用途に特徴を有する医薬
事例3 製造方法で特定された細胞の医薬用途に特徴を有するもの
「(1)ヒト体内から採取したW細胞を、タンパク質Xを0.1~0.2重量%含有収する工程、及び (2)工程(1)で回収された細胞を細胞外マトリックスY上に播種し、タンパクB中で24~48時間培養し、回収する工程、からなる工程により得られた細胞を有効成分として含有する抗癌剤。」

参照:「産業上利用することができる発明」及び「医薬発明」の審査基準改訂について
(平成21年10月23日 特許庁)

以上

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