改正法解説

7 平成23年特許法等改正の解説

(1)ライセンス契約の保護の強化

現行制度では、特許権の譲受人等の第三者に対して通常実施権を対抗するためには、あらかじめ特許庁に通常実施権の登録をしておくことが必要とされておりました。

しかしながら、登録の手間とコスト面等の理由により、通常実施権の登録が実務上困難となっているため、通常実施権の登録制度はほとんど利用されておりませんでした。

そこで、通常実施権を適切に保護するため、登録を必要とせずに、特許権等の譲受人等の第三者に対して通常実施権を対抗できる制度(当然対抗制度)が導入されました。

これにより、安定的な事業継続のため、実務上困難なライセンスの登録をしなくても、第三者からの差止請求等に対抗できるようになりました。

(2)冒認・共同出願違反の出願に係る救済措置

共同研究・共同開発が一般化する中で、共同発明者の一部によって特許権等が取得されてしまうケースなどが発生していますが、現行制度では、発明者保護の手段は特許権等を無効とする等に限られておりました。

そこで、このような場合に、発明者が特許権等を取り戻すことができるよう制度が整備されました。

(3)審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止

現行制度では、無効審決の取消訴訟の提起後に、争いの対象となった特許権の内容を訂正する審判(訂正審判)を請求することが可能であったため、訂正審判が請求され、事件が特許庁に差し戻されてしまうなど、紛争解決が非効率となる場合が生じていました。

そこで、無効審判の段階で訂正の機会を確保することにより、訴訟提起後は訂正審判の請求を禁止する等の見直しを行い、事件が無駄に裁判から審判に差し戻されることを防いで紛争処理の迅速化をはかることができるように制度が整備されました。

(4)再審の訴え等における主張の制限

安定的な事業活動のため、特許権侵害訴訟の判決確定後に特許の無効審決が確定した場合等の再審を制限し、紛争の蒸し返しを防ぐことができるように制度が整備されました。

(5)審決の確定の範囲等に係る規定の整備

権利内容の迅速な確定等のため、特許権の有効性の判断等を特許権の一部(請求項)ごとに行うための規定が整備されました。

(6)無効審判の確定審決の第三者効の廃止

現行制度では、無効審判等の確定審決の登録後は、何人も同一の事実・同一の証拠に基づいてその審判を請求することはできないことが規定されておりました。

しかし、確定審決の効果を審判に関与していない第三者にまで拡張することは妥当ではない等の指摘がありました。

そこで、紛争処理の適正化のため、確定審決の当事者等以外の者による同一事実・同一証拠に基づく無効審判請求を認めることができるように制度が整備されました。

(7)発明の新規性喪失の例外規定の見直し

現行制度においては、発明者自身が学会等で発明を公にした場合でも、特許権等の取得が認められなくなる場合がありました。

そこで、発明者が自ら公表した場合であれば、その公表態様を問わず(例:商品の販売、宣伝活動等)、発明が公になった後でも特許権等を取得し得るよう制度が整備されました。

(8)出願人・特許権者等の救済手続の見直し

現行制度における手続期間徒過についての救済は、対象となる手続が極めて限られており、またその要件が非常に厳格であって、実質的な的な救済が図られていないとの指摘がありました。

そこで、出願書類の翻訳文提出や特許料等追納の期間徒過に対する救済要件を緩和し、出願人や特許権者などの救済を図ることができるように制度が整備されました。

 

(9)商標権消滅後1年間の登録排除規定の廃止

現行制度では、何人かが使用していた登録商標は、商標権が消滅した後であっても、その商標に化体した信用が残存している場合もあるため、混同防止の観点から、商標権の消滅後1年間は、その商標と同一又は類似の関係にある商標を他人が商標登録することを認めておりませんでした(商標法第4条第1項第13号)。

しかしながら、①近年、製品のライフサイクルの短縮化が進んでいること、②特許庁において審査処理期間が短縮していること等の状況の変化の中で、商標権消滅後1年間、他人の商標登録を認めないことの弊害が顕著化してきており、結果として、同号は早期の権利付与という出願人のニーズに応えられない制度でもありました。

そこで、権利を早期に取得できるようにするため、商標権が消滅しても、1年間は他人による登録を排除している規定が廃止されました。

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